一流選手の動きはなぜ美しいのか「ロルフィングのたちばな in 東京」

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3.『一流選手の動きはなぜ美しいのか』

[からだの動きを科学する]

2013.1.27(日)

著者は現在関西大学で教鞭をとっている大学教授です。研究者でありながら「実践」面も重要視しており、「科学」と「実践」の橋渡しを模索している数少ない人物です。

科学というものは厳密性を要求する特性上、あまりにも実際の現場と乖離してしまうというデメリットがあります。スポーツなどの身体運動に関わる研究者の興味としては一流選手の動きを分析することにはあっても、それをスポーツ上達の為に応用するという点に関してあまり関心がありません。現場に近い研究になればなるほど、不確定要素が多くなり学会ではあまり評価されなくなる、というのが大きな要因ではあると思われます。

本書は科学的知見をまじえつつ如何にして実際の競技の場に応用したらよいかを説明しており非常に読み応えがあります。

スポーツをされる方、観覧されるのが趣味の方におススメしたい一冊です。

「たちばな」は最近こうした身体関係の本はあまり読まなくなってしまったのですが、購入するきっかけとなったのは著者が空手の宇城憲治氏がよくデモンストレーションで行う立った状態での腕相撲を再現している写真でした。宇城氏は某番組ではボディビルダーと行って完勝していました。

以前にも著者が書かれた書籍を何冊か読んでいましたが、こうした不思議に思えるデモンストレーションを体現してみせる著者に再度興味を持つこととなりました。

呼んでみてやはり科学的知見をもち、実践を視野にいれている方の書かれたものはものすごく参考になります。

科学だけだと無味乾燥でどう活用してよいのかがすぐにはわからなかったり、実践者視点だとパフォーマンスは提示してもその原理や法則といった客観的視点が抜け落ちていたりと書籍としてはあまり参考にならないものが多数ありますから。


一番興味をもったのは第4章にある、ジャマイカの短距離選手が行っていると言われる「坂道ダッシュ」と「前傾誘導効果」との考察でした。

あるテレビの取材ではウサイン・ボルト選手をはじめとするジャマイカの短距離選手の強さについて「坂道ダッシュ」をしているからと報道されたことがあります。理由としては坂道ダッシュにより身体の中心にある大腰筋が鍛えられるからだとのこと。実際にNHKの「ミラクルボディ」という番組ではジャマイカのアサファ・パウエル選手の大腰筋が内臓を押し分けるほど発達しているのが画像診断により判明しました。

しかし、著者は少し別の考え方をしています。それが「前傾誘導効果」です。「前傾誘導効果」というのは簡単にいってしまうと10度ほどつま先あがりの斜面にしばらくの間直立し、その後平地に目をつぶって立つとまっすぐに立っていると感じていても実は股関節から前傾姿勢になってしまう、というもの。

通常は視覚情報から身体を調整しているので顕著に身体が前傾することはありませんが、神経的には影響が少なからずある。陸上の短距離ではスタートから徐々に上体を立てることが必要で一気に上体を垂直にすると加速がうまくできないというのはよく知られていることですが、この「前傾誘導効果」により効率的に前傾姿勢が保たれるというのです。

また、大腰筋は大腿骨(ふとももの骨)を身体にひきつける働きがありますから前傾姿勢には大腰筋が大きく関わっているとも指摘しています。

ロルフィング的には身体の前後のポジションを整えるのにこの「前傾誘導効果」は使えるのではないかと思います。実際、本書をみるまえからつま先やカカトにほんの少しの段差をつけてムーブメントしたりとしたことを模索していました。身体の重心バランスの観点からだったのですが、これにこうした科学的な説明が加わると説得力が高まりそうです☆



以下目次。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
第1章 主観と客観のずれ
もも上げ神話
主観と客観のずれ
バネの誤解
動きの本質
スポーツ力
生理と心理のずれ

第2章 筋力に対する誤解
筋力万能主義
筋力の通じない世界
屈曲感覚
膝の抜きを使ったからだ使い
地面反力
伸展と屈曲

第3章 手足、体幹の使い方
腕の内絞りの誤解
からだの姿勢と気分
脚の動かし方

第4章 走り方を考える
地面を強く蹴る
バランスを崩したバランス
外旋着地
頭部の制御
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

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『一流選手の動きはなぜ美しいのか』

著 者:小田 伸午
単行本:198ページ
出版社:角川学芸出版 (2012/2/24)

「ウェイトトレーニングは、力を入れるためではなく、力を抜くために行う。講習会のいたるところで、筆者はさりげなく言い続けました。力感を抜いて、動作の質を上げる。これを、ボディーサイズが小さい日本代表チームの根本マインドにしよう。筋力がついたら、力を抜いてスイングしてもヘッド速度が十分出る。力みが取れた分、正確性・安定性が高まり、パフォーマンスが上がる。筋量を上げて力を入れるのではなく、力感を減らして実を上げる質的変化を目指す。」

(「あとがき」より)

2015年8月28日(金)
ムーブメント5シリーズを修正・加筆しました。

2015年4月13日(月)
●コラムに45.【身体】正しい【立ち方】を追加しました。

2015年4月12日(日)
●コラムに44.【身体】脱力と体軸を追加しました。

2014年1月31日(金)
ダンサーの為のロルフィングページを追加しました。

2014年1月25日(土)
●コラムに43.【解剖】肩甲骨と前鋸筋を追加しました。

2013年11月3日(日)
●コラムに42.【解剖】骨盤・仙腸関節の動きを追加しました。

2013年9月17日(火)
●おススメ本に13.『ホンダ イノベーションの神髄』を追加しました。

2013年9月16日(月)
●コラムに41.身体のゆがみ:O脚のメカニズムを追加しました。