「ゼロ・ポジション」と「立甲」

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33.【解剖】「ゼロ・ポジション」と「立甲」

2013.6.5(水)

今回は前回のコラムのローテーター・カフの機能を発揮させるゼロ・ポジションについて説明したいと思います。


ゼロ(0)・ポジションの定義

●肩甲骨の肩甲棘(※1)と上腕骨の長軸が一致している
●ローテーター・カフ(肩関節周囲筋すべてという見方もある)の張力が平等になり、つり合いの取れた状態になっている。
●このポジションでローテーター・カフが収縮しても(自発的な)回旋は生じ得ない。(※2)

※1:肩甲骨にある左右に盛り上がった部分。ここを境に棘上筋、棘下筋が付着している。
※2:ゼロ・ポジションで筋力を測定してみると内旋筋力は約50%筋力は低下し、外旋力は意外に落ちなかったという研究があります。



ゼロ・ポジションの特徴

ローテーター・カフ(回旋筋腱板)は上腕骨の骨頭(肩甲骨のお皿にはまる部分)をわしづかむように付着しています。



肩甲骨と上腕骨がゼロ・ポジションになると肩周辺の筋肉が上腕骨を引っ張り合い上腕骨を支柱としたテント構造のようになり、上腕骨の骨頭が肩甲骨のお皿にしっかりとはまります。

ゼロ・ポジションの効用

野球やバレーボールのオーバースロー動作では肩周辺の障害予防の為に重要視されています(ゼロ・ポジション以外だと一部の筋肉への負担がかかったり、関節の安定化が低下して筋肉が肩甲骨におしつぶされたりといったことにつながる為)。

また、空手やボクシングなどの突き・パンチでは肩甲骨面(スカプラプレーン)が上腕骨の長軸と一致しているので肩甲骨周辺の重量も相手に伝えられることにより打撃力がでます。

施術ではゼロ・ポジションを維持しながら行うことにより「骨」の感覚で触れたり、マッサージすることができるようになります。これはクライアントに施術への抵抗が起きづらくなり、クラシックなロルフィング系のディープティシューマッサージなどでは深部まで余計な力みなくワークができますし揉み返しも起こしにくくなることに繋がります。

ちなみに、腕をふりまわすワッキングやパンキングというストリート系のジャンルを専門にしているダンサーは肩周りを痛めているケースが多いと聞きますが、実際に有名ダンサーも肩を痛めており動画をみてみると無理やり腕を使おうとしているのが見て取れます。

ダンスの分野でもローテーター・カフやゼロ・ポジションという視点でコンディショニングを行う有効性を感じています。

ゼロ・ポジションを体感する方法

ではこのゼロ・ポジションを体験する方法です。これは簡単です。

まず、めちゃめちゃうれしいことが起こったことを思い浮かべてください。そして、頭上にガッツポーズしましょう!!

はい!この時の肩甲骨と上腕骨のポジションが「ゼロ・ポジション」になります。体感するのはものすごく簡単なんです。

じゃあなんでわざわざゼロ・ポジションなんて名前をつけているのか?そしてなぜコラムでこうして紹介しているのか?

もちろん理由があります。


ゼロ・ポジション自体が肩甲骨と上腕骨の関係の中で成立しますので土台となる肩甲骨が大きく動ければゼロ・ポジションをガッツポーズ以外の体勢でも維持できることになります。

その為にも肩甲骨が肋骨にべったり張り付いた状態では上手くゼロ・ポジションを広範囲で身に着けることはできません。その為にも肩甲骨周辺の癒着を取り除き、その可動性を高める必要があります。

重要なことですがゼロ・ポジションは身体が勝手に楽で効率的な動きを選択する為に起こります。意識的に身体をコントロールしようとしても上手く使えるようにはなりません。

知識だけでは身体は変わりません。このことは頭に入れておきましょう!!


肩甲骨が立った状態とは?

ゼロ・ポジションというのは肩甲骨と上腕骨との関係の中で成立しました。

すると、ゼロ・ポジションをキープした状態で肩甲骨を背骨側に持っていくと、肩甲骨の内側部分が肋骨からはがれるように「肩甲骨が立つ」という状態にすることができます(ブルース・リーが映画の中でみせている肩甲骨の操作がそれです)。

通常は背中周辺の筋肉がゆるむとできるようになると言われていますが、僕なりにリサーチしたところ先天的に何もしなくても肩甲骨が肋骨からはがれた状態になったり、立てたりできる人は意外に多くいます。ただし、大半の人は僧帽筋に余計な力をガチガチに入れており、上手く身体がつかえていません。

このように「肩甲骨が立つ」ことが即パフォーマンス向上に繋がるわけではありませんが一つの目安とすることは可能かと思われます。

僧帽筋まわりをゆるめる取組みを継続すると自然に構造的に立てやすくなります。

パフォーマンス的には別に大きく立たせる必要はないようです。


ちなみに四足動物では肩甲骨を立てた状態(以下立甲)というのは自然な状態です(下図参照)。つまり、四足動物の前脚はゼロ・ポジションで動いていると言えます。



上の図の「腹側鋸筋」を見てみると人間だと前鋸筋に相当すると考えられますが、立甲させるにはどうやら前鋸筋の力みをリリースすることが重要だと感じています。

翼状肩甲との関連性

肩甲骨が意図せず肋骨から浮いた病的な状態は「翼状肩甲」と呼ばれます。

翼状肩甲は長胸神経がマヒすることにより前鋸筋が働かなくなることによっておこるとされています。

また肩甲骨の下角とよばれる下にある三角部分がもちあがる翼状肩甲に似た症状も「大菱形筋」「前鋸筋」の筋力が病的に低下した時に起こるとされています。

病的か身体の操作という意味では違いますが現象とは似ていると言えるでしょう。

もし立甲に興味ある方は参考にしてみてください。



僕のロルフィングセッションではこうした「立甲」も視野にいれて行っています(クライアントさんのニーズにもよります)。

いずれ別のコラムで紹介しようと思いますが、ロルフィングでは通常行わない肩甲骨や鎖骨をはがすなどのいくつかの筋膜はがしのテクニックを使用します。まだまだ研究中ではありますが高校生などは比較的簡単に立ちやすいようです。

ただこれは組織的に柔らかい為であり身体が使えるわけではないので肩甲骨・鎖骨が解放されたらあとはムーブメントを日々継続し、身体を上手く使えるように取り組む必要はあります。



参考文献
『手塚一志の肩バイブル』
『ピッチングの正体』
『Sportsmedicine No.90』
『運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学』

2015年8月28日(金)
ムーブメント5シリーズを修正・加筆しました。

2015年4月13日(月)
●コラムに45.【身体】正しい【立ち方】を追加しました。

2015年4月12日(日)
●コラムに44.【身体】脱力と体軸を追加しました。

2014年1月31日(金)
ダンサーの為のロルフィングページを追加しました。

2014年1月25日(土)
●コラムに43.【解剖】肩甲骨と前鋸筋を追加しました。

2013年11月3日(日)
●コラムに42.【解剖】骨盤・仙腸関節の動きを追加しました。

2013年9月17日(火)
●おススメ本に13.『ホンダ イノベーションの神髄』を追加しました。

2013年9月16日(月)
●コラムに41.身体のゆがみ:O脚のメカニズムを追加しました。