真の股関節屈曲は70度しかない

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35.【解剖】真の股関節屈曲は70度しかない

Sportsmedicine148 特集「解剖の真実」より

2013.6.14(金)

知っていると思っていたことが実は違っていたということはよくあることです。

雑誌Sportsmedicine148の特集記事「解剖の真実」を読んでガツンと来ました。

まさに、これまで正しいと思っていた知識が実は間違っていたことを痛感しました。

著者は理学療法士でありながら700体の解剖に関わり、脳についても学び臨床で生かしている吉尾雅春氏です。

ネットで検索してみると理学療法士の方には良く知られている方のようで、多くのファンが居られるようです。

本特集はすべて興味深い内容なので理学療法士以外にも施術関係者だけでなく、ダンスやフィットネスインストラクターなど運動指導に携わる方にはぜひ読んでいただきたい内容ですが、特に注目すべき事柄は、

股関節(寛骨大腿関節)の真の屈曲角度は70度

という事実です。90度すらもいかないというのが衝撃的でした。


股関節の屈曲つまり、膝を胸に近づける動き(下図参照)ですが僕は90度ほどだと認識していました。これは感覚的にです。下記にありますが専門書でも股関節屈曲(実際には骨盤の動きも許容した角度)が135度などという記載があり厳密に言ってそれはありえないと思っていたからです。


試しに手持ちの専門書で股関節の屈曲角度はどのように記載されているのか調べてみましたので参考に掲載します。


カパンディ関節の生理学 Ⅱ下肢

医歯薬出版株式会社

股関節の屈曲は、下肢全体が股関節を通る前額面の前方へくるように大腿前面を体幹に近づける動きのことである。
<中略>
膝関節伸展位の場合、股関節の屈曲は90°であるが、膝関節屈曲位では、120°あるいはそれ以上に達する。

始めに書かれているようにこの書籍の股関節の屈曲とは寛骨大腿関節ではなく骨盤も含めた股関節周りの複合的動きを指しています。


筋骨格系のキネシオロジー

医歯薬出版株式会社

骨盤上の大腿骨の骨運動
矢状面の大腿骨回転
膝最大屈曲で、股関節は平均120度屈曲する



図解関節・運動器の機能解剖 下肢編

協同医書出版社

屈曲とは、前額面において膝を前方に移動する動きである。
その平均域は120°である。
※正確な股関節の運動を分析するには、しっかりした基本肢位の固定のうえに自動的、他動的運動の分析が重要で、このことは、股関節が骨盤の動きの代償に影響されることによる誤りを正すことになる。



スポーツ医科学基礎講座3 測定と評価

Book House HD

正常関節可動域値の表の中で股関節屈曲の参考可動域値には125°の記載があります。

やはり70度という記載はありません。

ある関節可動域の専門書をながめると股関節の屈曲角度を測定する際の注意点として「骨盤が動かないように」と注意はありましたが135度の可動域があるとの記載されていました。

関節の可動域というものはまっさきに研究されつくしているものだと思っていましたがこのように専門書でさえ厳密な角度は記されていないんですね。不思議な話です。



真の股関節の屈曲角度

軟部組織を除去した骨盤と大腿骨で股関節の屈曲角度を測定すると臼蓋と大腿骨頸部がぶつかるので平均93度以上はしません(ここのところは骨格の写真が本書に掲載されています)。



ただし、これはあくまでも軟部組織を除去した骨だけでの可動域の話。実際の身体には筋肉といった軟部組織が存在しています。軟部組織がある生体では70度ということになります。

股関節の前後にある筋肉は動きを制限しています。後ろでは大臀筋などが大腿骨をひっぱる形に存在しており、前方には大腿四頭筋の一つである大腿直筋があります。

大臀筋をゆるませると80度ほど屈曲ができますがそうなると大腿直筋を挟んでしまい(インピンジメント)、炎症をおこす原因になります。


なぜ屈曲角度が70度かを知っておく必要があるか?

おそらく可動域が70度でも130度でも一般の方にとってはそれほどの違いはないと思います。ただし、記事に書かれていることですが脳卒中の方へのリハビリではものすごく重要になります。この知識がないとセラピスト自身が患者さんへ障害を負わせてしまう危険があるからです。

記事ではセラピストがこの知識を知らない為に脳卒中を患った患者さんの股関節の可動域をみた際に90度ほどしかないと「可動域訓練が必要」と判断する。でも、脳卒中が起きた脳の部位によって本来自然に大腿骨の動きにあわせて骨盤が動くところその反応がおこりにくくなっているので結果として、筋肉を知らず知らずの内におしつぶし障害を与えてしまう、とあります。それも、かなりの頻度で起こっているとのことです。

記事では健常者は大腿骨が5度屈曲したあたりから骨盤が動き始めるのに対して、脳卒中の方は約30度にならないと骨盤が動きださない。結果として大腿骨・骨盤の複合的な動きとしての股関節屈曲角度は健常者よりも小さくなるとのことです。

前職では高齢者の方に介護予防の運動指導をしていましたが、もしかしたら高齢者の動きも実は程度の差はあれ同じようなことが起きているのかもしれません。同じ年齢の方でも活動的な方の歩きなどは滑らかさが違っています。あらゆる身体運動は全身の関係性によってなりたっていますので、身体のどこかの反応が鈍ってしまうと全体の動きにも影響を受けている可能性があります。

はっきり言ってこれは仮説にもなっていない思いつきですが。。。


イスに座ることへの応用

身体系では「イスに座る」際には骨盤を立てるということを言われることが多いようです。ただし、股関節は70度しか屈曲しない、ということを知らないとせっかく身体によいと思っていても逆効果になるケースがあると予想できます。

大腿骨が屈曲していくと60度を超えたところでより大きな力が屈曲させるのに必要になります。もし、イスに座った場合ふとももが地面と平行にした状態で骨盤を立てようとするとそれは大腰筋などの筋肉に余計な筋力が必要となります。余計な筋力を使うとその影響は全身に波及し身体全体が緊張しやすくなります。

こうした余計な筋力を使わない為の1つの方法としてはふとももが地面と平行とせず、若干ななめになるように調節すると骨盤を立てた状態でも楽に座ることが可能です。

ロルファーになる為にロルフィングを学んだ際に海外の先生がイスでのワークを行う際に、大腿部を傾斜させていたのが印象に残っていました。当時は骨盤を立てて体重が足裏にかかるようにする為としか理解していませんでしたが、股関節屈曲が70度という知識を知ると合点がいきました。


発展

真の股関節の屈曲は70度ということは日常生活やスポーツ競技、ダンスでは如何に骨盤・腰椎まわりの動きが重要かがわかります。脚を扱うには股関節ではなく骨盤も含めた動きだからです。

大腿骨の動きと並行しておこる腰椎骨盤リズムの動きがなめらかであればあるほど身体に負担のかからず、さらにパフォーマンスが高まります。

(故)伊藤昇氏の提唱した胴体力トレーニングでは骨盤が細かく動くようになると(細分化)股関節の捉えが生まれると著者で書かれています。

実際に股関節の捉えがどういったものかは、直接習ったことはないのでわかりませんが自分で骨盤・腰椎まわりをゆるめるとスーっと地面に乗るような感覚が強くなります。そのような状態で踊ったり、スローイングしたり、蹴りをしてみるとかなりいいんです。

骨盤・腰椎周り非常に重要です!!!

僕のムーブメントワークとしてこの骨盤周りの動きをひきだすワークは固まりつつあります。ただ上肢に比べると能動的に行ってもらう率が高くなるので、導入としてもっと効果が即効で感じてもらえるワークにできたらと思います。

解剖の真実.jpg

『Sportsmedicine148 特集「解剖の真実」』

特集記事 著者:吉尾 雅春
出版社:ブックハウス・エイチディ (2013/3/15)

今まで解剖はもうやることがないと社会的に言われていたのですが、視点を変えると解明すべきことがもっともっとあるんだと言われました。「PTとしての視点というのはこれまで自分のなかでは展開できていないので、ぜひ一緒にやろう」と言っていただいて、早速その日から解剖を行うことになったのです。

医学モデルの解剖と理学療法や作業療法モデルの解剖ということです。同じ解剖を行うにしても、そういう視点で解剖をしなかったら意味がないのです。

私はへそ曲りでして、昔の偉い人たちが言っていることを信用しないんです。なぜかと言うと、それまで信じてやっていたことが、あとでどんどんハシゴを外されていくのです。だから常に疑いの目で見ていこうという気持ちがありました。

特集記事中より

2015年8月28日(金)
ムーブメント5シリーズを修正・加筆しました。

2015年4月13日(月)
●コラムに45.【身体】正しい【立ち方】を追加しました。

2015年4月12日(日)
●コラムに44.【身体】脱力と体軸を追加しました。

2014年1月31日(金)
ダンサーの為のロルフィングページを追加しました。

2014年1月25日(土)
●コラムに43.【解剖】肩甲骨と前鋸筋を追加しました。

2013年11月3日(日)
●コラムに42.【解剖】骨盤・仙腸関節の動きを追加しました。

2013年9月17日(火)
●おススメ本に13.『ホンダ イノベーションの神髄』を追加しました。

2013年9月16日(月)
●コラムに41.身体のゆがみ:O脚のメカニズムを追加しました。