スカイフック:天から吊られる意識

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38.スカイフック:天から吊られる意識

2013.7.19(金)

ロルフィングの創始者であるアイダ・ロルフは天からロープのついたフックで頭を吊られるようにイメージすることを「スカイフック」と名づけました。

これはロルフィングの専売特許ではなくダンスや武道・武術、フィットネスの世界ではキレイな姿勢や適切な身体使いの指導の現場ではよく言われています。

でも、その指導が上手く機能しているかと言えばなかなか難しいのが現状のようです。

スカイフックのイメージをもつことは本来無駄な力を抜いて人間本来の立ち方や身体の使い方をする為です。ですが、それが逆に身体を固める原因になっているケースが多々あります。

今回はこのスカイフックを活かす方法を説明したいと思います。



「スカイフック」が上手くいかない原因

なぜスカイフックのイメージをもっているのに上手くいかないのは何が原因なのでしょうか?

それは単刀直入に言えば、「吊られる」必要があるのに「持ち上げてしまっている」からです。持ち上げてしまうと首や背中の筋肉に過度な緊張が走ります。これではせっかく身体を楽にしようとした行為が、逆の結果になってしまいます。

やろうとしていることとやっていることが異なっているんですね。

ここで「吊られる」為に必要な条件を整理しておきましょう。


吊られる為に必要な条件はシンプルです。それは以下の2つ。

①下への方向性(重さの感覚)
②上への方向性

注意:「上への方向性」だけでは持ち上げることにしかなりません。



鉛直方向を簡易的に測る「下げ振り」という工具があります。この下げ振りは重りに糸をつけて垂らすことによって鉛直方向(重力の方向)が視覚的にわかります。

この「下げ振り」の糸を持って重りを垂らすと「重さ」を感じることができます。これが下への方向です。

そして、つり合いをとる為に手で力を入れているのが上への方向です。この上下の方向を身体で感知できてはじめてスカイフックのイメージが役に立ちます。

頭、首を持ち上げている状態というのはこの下げ振りの重りをわしずかみにしているようなもの。



書籍「ボディワイズ」の170ページにスカイフックに関する記述がありますので引用したいと思います。

頭のてっぺんから、アイダ・ロルフがスカイフックと名づけた架空の大鈎で釣り上げられていると想像してみてほしい。その鈎が身体を釣り上げているので、肩、腕、背骨、背中、腰、足も自然にぶら下がっている。だから、どこも緊張させなくてよい。

ジョゼフ・ヘラー&ウィリアム・A・ヘンキン著「ボディワイズ」より

著者の1人であるジョゼフ・ヘラーは初代ロルフ研究所所長です。
これによると「スカイフック」は本来は下への方向もしっかりと含まれた考え方であることがうかがえます。

また、書籍「これがボディワークだ」52~53ページには以下の記述があります。

ロルフ研究所が創設された当時、「スカイフック」と呼ばれるイメージ法が、クライアントに教示されていました。この方法で用いられるイメージは、「空から下がるフック付きのロープによって、やはりフック付きの自分の頭が引き上げられる」というもので、実は<パリントニシティ>の原理に則していません。また脊柱の自由な動きが妨げられ、かえって身体バランスを失わせる場合も少なくありません。今日では、「スカイフック」が用いられることはほとんどなくなりました。

小川隆之、斉藤瑞穂著「これがボディワークだ」より

パリントニシティ(2方向性):ロルフィングの原則の1つ。「これがボディワークだ」によれば逆方向のベクトルの調和であり、力学的なバランスを保つ為の緊張。動作で言うと、伸びあがろうとするとき、同時につま先が床を踏みしめること、とあります。



自分の頭が引き上げられる”という表現をされているようにこの記述からはスカイフックがただ単に頭をもちあげるだけになってしまっていることが想像されます。

類推ですが、当初の上下方向が含まれたスカイフックの概念から現在では「下への方向性」が失われてしまってしまっているのかもしれません。

個人的にはスカイフックの概念自体にはパリントニシティの原則が含まれたものだと捉えています(武術で言われる「軸」という考え方はまさに上下の方向が含まれています)。

既存のパリントニシティの考え方だとストリート系のダンスや武術的な身体の使い方では身体運動が制限されてしまうのを感じますので、このあたりは議論が必要なところです。


下への方向

ではスカイフックを活かす為の「下への方向」を意識するにはどうしたらよいのでしょうか?

まず最初にするべきことは「重力に身体をゆだねる」ことです。簡単な方法は身体の各部分の力をぬいて重さを感じること。力をぬけばぬくほど身体の重さが実感できます。身体の重さが実感できると重力が働く方向が身体で体感しやすくなり、より少ない筋力で立てるようになります。

また、上手く重さを感じた状態でスカイフックのイメージをもつと、そのイメージに身体が反応しやすくなり更に余計な力がぬけるという好循環にもなります(これはなんとも不思議な感じ!!)。

肩周りについて言えば、力がぬけて肩が下がると頭が自然と吊られる感覚が芽生えてきます。

そういった意味で言えば意図的なスカイフック感覚は必要ないと個人的には思います。というか意図的なものでは使えないですよね。



あれ?結局スカイフックは必要ないのかな?!

なにはともあれ身体を構造通りに使う為には「何かをする」ことよりも「何もしない」ことが大事なんです

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